「公正な社会では最良の情報を得るものが勝つ。しかし、私たちは公正な社会を相手にしているわけではない。私たちは、敵が戦いに使うツールと同じツールを使って戦う必要がある。そしてもっと賢く、もっと巧妙にやらなければならない。成功した革命はすべて、上からではなく、下から始まったという事実を忘れてはいけない」
― イヴォン・シュイナード
パタゴニアが環境助成金プログラムを開始してから10年ほど経ったころ、私たちは増えつづける助成先に対してただ資金を提供するだけでなく、きっとほかに何かできることがあるに違いないと考えるようになりました。そして営利と非営利の世界における類似点をくらべてみると、双方ともに同じような課題が多数あることに気づきました。今日のようにテンポが速く、テクノロジーで駆り立てられた競争の厳しい世界で効率よく行動するには、効果的な戦略を構築し、メッセージを明確化し、そのメッセージを伝えるための妥当な手段を見つける必要があります。けれども道具箱に適切なツールがなければ、効率よく行動することはできません。そこでパタゴニアは、経験豊かなプロと助成先から数名の活動家を招いて会議をおこない、より効果的な活動家になるにはどうすればよいかを学んでもらいました。研修、宿泊、食事など、一切の会議費用はパタゴニアが負担し、参加者にはおのおののストーリーと情熱とアイデアだけをもって参加してもらいました。こうして発足したのが「草の根活動家のためのツール会議」です。参加者に大好評だったこの研修は、以来18か月ごとに開催されています。
2005年5月にはカリフォルニア州のレイク・タホの南に位置するスタンフォード・シエラ・キャンプで、80人以上の活動家たちとともに「ツール会議」の10周年を祝いました。光栄なことに、自然保護運動の世界ではもっとも有能で刺激的な講演者の1人、デイブ・フォアマン氏の講演で幕を開けることができました。「アース・ファースト」の共同設立者であり「リワイルディング・インスティテュート」の上級研究員でもある彼はまた、第1回目の会議での基調講演者でもありました。野生動物と手つかずの自然が残る土地を保護することに対する彼の情熱や献身、そして真剣な姿勢は、参加者を駆り立てると同時に3日間の学習やネットワーキング、連帯感などを生み出すはずみとなりました。
会議では、非営利組織とパタゴニア社それぞれから超一流トレーナーが顔をそろえ、参加者を鼓舞するストーリーや知識、専門技術を分かち合いました。そして各自のコミュニティーで機運を高める方法やメッセージを伝える方法をはじめ、取り組んでいる課題をマーケティングする手段、キャンペーン戦略、資金調達戦略、草の根ロビー活動、さらにより懸命にではなくより賢明な方法など、重要な課題に幅広く取り組みました。
前回の会議以来、会議で学んだスキルがそれぞれのキャンペーンに効果を生んだという話を何人もの参加者たちから聞くようになりました。また、活動家のネットワーク内で連帯感を得ることができたという人たちもいました。ある参加者はこう書いています。「会議は、感情的な要素、具体的な事実、ロールプレイでの実施練習が非常にバランスよく組み込まれていました。会議の効率性に対する基準も非常に高く設定されていました」。
この「ツール会議」の企画の目的は、環境保護活動家がより効率よく行動するために大切なツールを提供することですが、会議の後はパタゴニアで働く私たち自身も活気づけられ、みずからの事業でもさらに効率よく行動できるようになったと感じています。第一線で活躍する献身的な活動家たちから成るすばらしいコミュニティーで過ごした3日間は、パタゴニアの理念、つまり「ビジネスを手段として環境危機に警鐘をならし、解決に向けて実行する」を再度確認する機会でもありました。
注記: 現在18か月おきにパタゴニア社が主催し、アメリカで開催される「ツール会議」に招待できる活動家の人数には制限があります。希望される方全員をお招きしたいのですが、財源が限られているため、招待者のみを対象としています。悪しからずご了承ください。