by リック・リッジウェイ
『Fall 2009』カタログ掲載
移動性の野生動物にとって世界がどのように見えるのかを体感したいのなら、その動物と一緒に移動するのがいちばんである。昨年秋、私はサウスダコタ州出身の24歳の写真家ジョー・リースと組んで、かの有名な「プロングホーン街道」を歩いた。飛び出した目、黒と白と淡黄褐色の毛、そして最高時速100キロで走るためにデザインされた細い脚を持つ、アンテロープとも呼ばれる愛らしいこの動物の群れは、毎年秋と春にグランド・ティトン国立公園から約250キロ南東にあるワイオミング州レッド・デザートへと移動する。この距離はアルゼンチンとカナダ間の陸地を移動する哺乳類のなかでは、これまでに確認されたなかで最長距離である。
この2年間、「プロングホーン街道」はジョーの生活の中心を占め、それは普通の感覚からすれば執念とさえ思われた。おんぼろのピックアップトラックで暮らしながらプロングホーンの生息地を追って移動する…。トラックのキャンパーに敷いたマットレスの下には、クローズアップを撮影する際にカモフラージュとして使う実物大のプロングホーンの切り抜きがある。トラックにはもう少し現実的で有効な手段として赤外線作動式の仕掛けカメラも積んである。これまで移動中のプロングホーンのクローズアップ撮影に成功した者はなく、ジョーは移動時の写真が撮れれば、移動のためのコリドーを脅威にさらしている脆弱性に対する世間の認識を広めることができると考えている。
写真を撮影するためには、毎年9月下旬から11月上旬に始まるプロングホーンの移動と同時期に同じルートを歩く必要がある。移動が始まるきっかけは、通常気温の低下であるようだ。けれどもパタゴニア社で重役を務める私の、「時間割のある、あまり野生的でない」生活においては、あらかじめ9日間の徒歩追跡の日程を決めなければならなかった。そこでジョーと私は10月のはじめ、ジャクソンホールの東に位置するセージの平原を抜ける獣道をたどり始めた。朝でもTシャツだけで過ごせるほど快適な陽気で、空は青く、汗がギラギラと光った。私たちは300頭はくだらないバイソンの群れの近くで草を食むプロゴングホーンの小集団をいくつか追い越したが、プロングホーンたちは、いまの暮らしがすこぶる幸せそうに見えた。